東京電力のスマート契約について

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東京電力が始めたスマート契約ってどんな仕組み?

2016年4月の電力自由化後に東京電力が打ち出した「スマート契約」

これは電気を使った分だけ電気料金を支払う、実量制のシステムのことです。

スマート契約を導入したねらいやポイント、契約の仕組みについてまとめました。

■電気料金の仕組み

電気料金とは、月々決まった額の基本料金に、毎月使った分の電力使用量と再生可能エネルギー発電促進賦課金、燃料調整費を合計した金額のことです。

東京電力が提供を始めたスマート契約ではここで言う「基本料金」の部分の考え方が変わります。

●ブレーカー契約

従来の考え方をブレーカー契約と言います。

一般家庭なら20A〜60Aの間で設定されていて、それに応じて基本料金が決められていました。

例えば50Aで契約していた場合、1ヶ月の間で20Aまでしか使わなくても50Aギリギリまで使っていても、基本料金は同じ金額だったのです。

東京電力のプランにおいても同様で50Aを超えて使った場合はブレーカーが落ちる仕組みでした。

●スマート契約

今回東京電力から一般家庭向けに新たに導入されたスマート契約ではこのアンペアの概念がなく、1年間のピーク電力をもとに電気料金が算出されることになります。

この方法は実量制と呼ばれ、工場や店舗など高圧電力向けではすでに普及している考え方でした。

一般家庭向けの低圧契約にも採用されたのは、電力自由化がきっかけの東京電力による新しい試みだと言えます。

■スマート契約の電気料金の考え方

では、実際に東京電力のスマート契約ではどのように電気料金を算出するのかを見ていきましょう。

●ピーク電力から算出する

電力自由化後、東京電力だけでなく全ての電力会社においてこれまでのアナログ式の電気メーターから、スマートメーターと呼ばれるデジタル式に順次切り替えが進んでいます。

スマートメーターを導入すると30分ごとの電気使用量がリアルタイムでわかるため、これを元に過去1年間で最も電気使用量が高かったところを割り出します。

これがピーク電力です。

スマートメーターは365日24時間、30分ごとの電力の平均値をとっています。

その月の中でもっとも電力を多く消費した30分間の電力消費量が5kWhだとすると、その後1年間は「5kWh×料金単価」が基準値となり、電気料金が算出されます。

●注意したいポイント

東京電力が提供していた従来のブレーカー契約と違い、スマート契約の場合は上限がありません。

ブレーカー契約なら、同時に電力を使いすぎるとブレーカーが落ちるので「今、電気を使いすぎてたな」と気づくことができますが、スマート契約では無限に使えてしまいます。

そのため、日頃から常に使用電力を意識する必要があるのです。

■スマート契約導入のねらいとは

ピーク電力を基準にしたら、電気料金が今より高くなるのではないか?

という声も聞かれます。

スマートメーターがまだ普及していない現在では、実際に自分がどの程度電力を使用しているか把握するのは難しい上、うっかりスイッチを消し忘れるなど30分間の電気使用量が跳ね上がる可能性もあります。

なぜ東京電力はスマート契約という方法を導入したのでしょうか。

●電気料金を意識するきっかけづくりに

スマート契約ではアンペアの概念がないため、電力を使った分だけ自分に跳ね返ってきます。

それは言い換えれば、自分が意識することで節電にもつながるということ。

黙っていても毎月同じ基本料金がかかっていた状態から、自分の電力使用量に応じて基本料金が変わる状況に置かれることで、電気料金に対する意識を強く持って欲しいという東京電力の狙いがあるのです。

■実際に導入するときのポイント

スマート契約は、こまめに電気を消すなど普段から節電を意識している家庭や、もともとの電力使用量が少ない家庭ではお得になる可能性があります。

実際に導入する際のポイントについて見ていきましょう。

●基本料金を安くするコツ

まずは、自宅で消費電力が30分間に集中する時間帯を把握します。

朝の時間帯だったら、エアコンは立ち上げ時に電力を多く消費するため先につけ、ドライヤーなど瞬間的に電力を多く消費するものと同時に使わないなどの工夫をしましょう。

今後は、自分たちでも個別の家電ごとに電力使用量がわかるHEMSが普及することで、電力の見える化がさらに進んで節電への意識が高まることも期待されています。

また、東電によると希望すればブレーカーは残してもらうことができるそう。

スマートメーターでも上限を設定することは可能ですので、使いすぎが怖い場合はこれを利用してもいいですね。

●スマート契約が向かない家庭もある

注意したいのは、この契約方法では損になる場合もあるという点です。

1年を通じて電力消費量に大きな差がない家庭ならいいのですが、1日のうちや1ヶ月のどこかで集中して多くの電力を使う場面がある家庭の場合、そのピーク電力が基準となりその後1年間の基本料金が割高になってしまいます。

例えばお盆やお正月に家族が帰省し、照明・お風呂・冷暖房器具を一気に使用すると考えると、そんな場面で節電とも言っていられませんよね。

このような家庭の場合は、従来のブレーカー契約のほうが安心だと言えるでしょう。

■節電の意識の高まりへの第一歩になれるか

東京電力に続き、スマート契約を導入する新規参入事業者が増えています。

従来のブレーカーの概念にとらわれないことで、基本料金や電力使用量を抑えようという個人の意識を変えるきっかけになるかもしれませんね。

上手に使えば電気料金がお得になるスマート契約、ぜひ検討してみてください。

私がお届けしました!

わかな
ライター/節電・節約大好き
半ば節電・節約が趣味の女性ライターです。「お家の電気」の話が得意です。

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