こんな時どうする?電力自由化における問題点やトラブルの事例
2016年4月に電力自由化が施行されました。
乗り換え率は2ヶ月経過時点で全体の約2%と低い割合となっています。
電力自由化前と後では、実際にどのような変化があったのでしょうか?
電力自由化後にわかった問題点や、トラブルの事例について見ていきましょう。
■東電のシステム不具合
2016年4月の電力自由化後間もなく、東電で大規模なシステム不具合が発生しました。
この問題により、新規顧客の獲得どころではなくなっている新電力会社もあります。一体なにが起きたのでしょうか?
●請求書が届かない!?
電力自由化が始まってすぐ、それに水を差すような問題が起きました。
東京電力エリアで新規参入事業者に乗り換えた世帯に、請求書が届かなくなってしまったのです。
原因は、東京電力が新電力に電気の使用量を伝える「託送業務システム」に不具合が生じたことでした。
使用量がわからないと、新電力会社は消費者に電気料金を請求することができません。
2016年8月の時点で通知遅れは2万件に届こうとしており、電力会社も消費者も含めて現場は混乱を極めました。
なぜ、このようなトラブルが起きてしまったのでしょうか。
●スマートメーターの設置遅れが原因
新電力に切り替えた世帯は、従来の電気メーターからデジタル式のスマートメーターに交換が必要です。
これによって各世帯のデータが電力会社に送られるのですが、電力自由化の開始に伴って依頼が集中し、切り替え工事が追いつかなくなってしまいました。
電力自由化開始後も、新電力会社は東京電力の電線を利用しています。
新規契約者のデータを集めて通知するのも東京電力の役割であり、いわば電力自由化の下地を担っているのです。
それが開始早々トラブルに遭ったことで、新電力会社が新規契約者からクレームを受けたり、さらにコストが嵩んでしまったりといった問題が起きてしまいました。
工事依頼が集中することは、電力自由化開始前から予測できたことです。
国内の送配電事業を引き受けている業者として、責任ある対処が求められます。
■電気料金値上げへの懸念
よく言われるのが、「電力自由化によって電気代が上がるのではないか?」ということです。
その理由として、すでに電力自由化を実施した諸外国の事例が挙げられます。
実際にあったケースを見てみましょう。
●世界で値上がりした事例
電力自由化前に比べて電気料金が値上がりした例には、イギリス、ドイツ、イタリアなどがあります。
自由化すると、政府の承認を得なくても電力会社が自由に価格を決められるようになるため、全体的に値上がりする傾向にあるのです。
値上がりしてしまう大きな要因というのは3つあります。。
1つ目は、燃料価格の高騰です。
石油、石炭、天然ガスなどのエネルギー価格は、欧米諸国で電力自由化が始まった90年代と比べ2〜5倍の水準にまで値上がりしています。
2つ目は再生可能エネルギーによる税金負担です。
日本でも再生可能エネルギー発電促進賦課金として毎月の電気代に上乗せして払っているもので、省エネを普及させるために国が定めた税金が存在します。
特にドイツでは電気料金の半分をこの税金が占めているのです。
3つ目は市場の独占化です。
ドイツやフランスでは大手電力会社が市場のシェアのほとんどを占めており、価格競争が生まれにくく電気料金の値下がりもなかなか見込めないといった状態にあります。
●日本ではどうなる?
これを踏まえて、日本の場合はどうなるのか考えてみましょう。
・燃料価格について
燃料価格は2010年から2014年までをピークに、現在は減少に転じています。
しばらくは急激な高騰はないと言われていますが、低い状態が続くとも言い切れません。
・再エネ賦課金について
再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担は毎年引き上げられていて、制度を開始した2012年と比べると2016年時点で10倍になっています。
2030年までの目標を達成するには、さらにこの2倍の負担が必要だという試算が出ています。
このため、今後のさらなる値上げは避けられない状況です。
・市場の独占化について
現在は新規参入業者が乱立している状態で、どの程度生き残っていくかは未知数です。
ただ、2016年の電力の小売り自由化に続き、2020年には発送電の分野でも自由化が予定されています。
これにより、現在は東京電力が一手に引き受けている発送電事業をすべての電力会社が行えるようになるのです。
このことで実質的な独占状態は解消されると言えるでしょう。
●値上がりは避けられない
電力会社を乗り換えることで、電気代が安くなることを誰もが期待すると思います。
しかしこれらの事情を踏まえると、将来的な値上がりは避けられないでしょう。
それでも、これまではただ払うだけだった電気代にさまざまなセット割やポイントサービスなどの付加価値がついたのは、消費者にとってはメリットだと言えます。
■解約金のトラブル
乗り換えの際、意外と見落としがちなのが解約金ではないでしょうか。
解約金が発生する条件は電力会社やプランによって異なるため、トラブルになるケースがあるようです。
具体的に各ケースを見てみましょう。
●解約金は電力会社によってさまざま
解約金の設定については電力会社ごとに異なっており、2,000円程度の会社もあれば1万円を越えるところもあります。
また、解約金が発生する条件についてもさまざまです。
決まった契約年数以下で解約した場合に発生するケースや、あらかじめ決められた解約月以外の解約で発生するケースなどがあります。
契約はおおむね2年縛りと呼ばれるスタイルが主流です。
これは2年間使うことを確約するかわりに月々の料金を安くするというもので、違約金の設定も高めになっています。
また、セット割引で契約した場合も注意が必要です。
たとえば電気とガスのセット割で契約し、あとあとガスだけを解約したくなったとしても、解約金がそれぞれにかかってくる場合があるからです。
認識や条件の違いからトラブルにならないためにも、公式サイトや電話サポートを利用して事前によく確認しましょう。
●電力会社・プラン選びは慎重に
新規参入業者はまだまだ増え続けている状況です。
それは言い換えれば、今後もっとお得なプランが登場する可能性があるということです。
一度契約すると解約金が発生することを考えれば、頻繁に乗り換えるのは賢い方法とは言えません。
電力会社やプラン選びは慎重に行う必要があるのです。
■問題点やトラブルの事例に学ぶ
現在は電力自由化が施行されたばかりで、まだまだ問題点やトラブルが多い状況です。
そのため、これらを認識した上で回避するための対処がそれぞれに必要となるのです。