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電力自由化でユニバーサルサービスは確保できるのか?
電力自由化に伴い、ユニバーサルサービスとしての電気がどう変わっていくのか。また、ユニバーサルサービスを維持していくうえで今後起こり得る問題や、地域ごとにどうしても出てしまう新規参入業者の数の差、既存の電力会社が新規参入してきた他社との競争によってどう変わっていくかを考えていきます。
ユニバーサルサービスってなに?
■ユニバーサルサービスとは
ユニバーサルサービスとは、社会全体でみんなが等しく受益できる公共的なサービスのことをいいます。電気やガス、水道、郵便、通信、放送などがこれに当たります。日本国内では、地域によって価格に多少の差はありますが、みんなが電気やガス、水道を使うことができますし、郵便物も出せます。テレビを付ければテレビ番組を見ることができますし、スマートフォンや携帯電話で誰とでも繋がることができます。ユニバーサルサービスがあるからこそ、人が数人しか住んでいないような山奥の村や離島でも電気が通っており、電話が通じ、郵便物も届くのです。
■ユニバーサルサービスの4つの条件
「どこでも」「誰でも」「負担が可能な」「均一なサービス」この4つが揃ったのがユニバーサルサービスで、これがなければ、山奥や離島に住んでいる方は52円の郵便はがき1枚を出すのにも数千円や数万円必要になりますし、住民の少ない地域では採算が取れないので電気もガスも水道も今の数倍~数十倍の価格になってしまうことでしょう。国民全員が公平な公共サービスを受けるために、ユニバーサルサービスは必要不可欠なものなのです。
電力自由化とユニバーサルサービスの関係
■電力自由化とユニバーサルサービス
電力自由化が始まる前までは、電気は電気事業法に基づき、各地域を担当する電力会社が提供していました。そのため、離島など電線が繋がっていない地域でもユニバーサルサービスとして電気が供給されていたのです。ところが電力自由化になったことで、今までその地域を担当していた電力会社も採算性を求めることができるようになりました。そうなれば当然、採算の取れない地域(山奥や離島等)に電気を送ることを止めたいということになってしまいます。国としてもそうなることを懸念していたので、電力会社と電力自由化で電気事業に新規参入する会社に対し「電気提供サービスを行うエリア内において、人口の少ない地域でも人口の多い地域と同じレベルの電力を提供すること」と法律で義務化しました。つまり「電気提供をするなら都市部と地方で区別しちゃだめですよ」ということですね。
■新規参入業者数の地域差
電力自由化で新規参入した会社は当然少しでも採算の取れる地域で電気を売りたいので、東京電力エリアや中部電力エリア、関西エリアといった人口の多いところに会社が集まっているのが現状です。東京電力エリアで現在選択可能な会社は実に40社を超えますが、北海道電力エリアや東北電力エリア、四国電力エリアで選べる会社の数は東京の半分以下です。特に沖縄エリアは離島が多く、島ごとの人口も少ない場所が多いため、電力自由化が始まってもいまだ新規参入した会社はありません。
電力自由化によって起こる問題
■ユニバーサルサービスと電力自由化の問題点
ユニバーサルサービスを行うには、どんなに採算が取れない場所でも莫大な費用をかける必要もでてきます。そうなれば、その地域では常に赤字が出続けるということになりますが、現在のところ国としてはその地域を担当する電力会社が赤字分を負担するように求めています。沖縄電力や九州電力、四国電力といった人口の少ない地域が多いエリアは、赤字になった分を都市部の電気料金に上乗せするしかありません。今までは1つの地域を1つの電力会社が担当していたのでそれで問題ありませんでしたが、電力自由化で採算を求めることができるようになったため、電力会社にとって負担でしかない地域が現実問題として存在しており、そこで出る赤字をどう国がフォローしていくかが課題になります。
■独占値上げ状態が生まれる恐れも
沖縄電力エリアのような、なかなか採算を取るのが難しいエリアでは、新規の電力業者が入ってくるのは難しいのが現状です。そのうえ、電力自由化に伴って電気料金を自由に設定することができるようになったため、採算が取れないという理由を付けて電気料金を値上げすることも可能になります。他社との競争によって安くなるはずの電気代が、一部の地域では逆に値上がりしてしまっては、電力自由化の意味がありません。どこまで既存の電力会社がいまの価格を維持できるのかも今後の大きなポイントになりそうです。
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ジャンヌ
ライター/エコなものが好き
エコじゃないものと闘う、地球に優しい女性ライター
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