ブンヤ教授の電ニュース!:電力自由化による新電力乗り換えは本当におすすめ?~歴史編~
日本で初めて電気が使われたのは1878年の事。
それから40年近くが経過して2016年の4月にはついに一般家庭を対象にした電気供給を自由化する形で電力自由化の第二段階が実現しました。
決して平坦な道のりとは言えないその歴史を省みながら、新電力への乗り換えが本当におすすめなのかどうかを考えてみましょう。
■消費者が電気を選べる時代へ突入
2016年4月、電力小売り全面自由化が始まりましたが、複合的な理由から自由化に踏み切りました。
2011年3月11日に起きた非常に東日本大震災によって発生した計画停電、地域に分参型電源が整備されていないことや、効率的に電気を供給できていないなど、多くの理由が考えられます。
また、電気事業の世界ではスマートメーターの導入に代表されるIT化の波も到来しています。
こういったいくつかの要因から起こった電力自由化ですが、本当に供給先を切り替えるのがおすすめなのか、歴史を追うことで検証してみましょう。
■日本の電力自由化の流れ
1995年に31年振りの電気事業法改正が行われ、電力会社に電力を供給する事業に、独立系発電事業者の参入が可能となりました。
この段階では新規参入事業者が、電気を売ることができたのは、大型ビルなどの「特定の地点」に限定され、一般家庭への小売りは対象とならず、我々の生活に直接的な影響を及ぼすことはありませんでした。
さらに1999年にも電気事業法が改正され、電力会社が保有する送電網の利用条件や、小売りの面でも規制緩和が進みました。
それでも新規参入業者が電気を売ることができたのは、大規模工場や、デパートなど特別高圧(2万V以上)で受電し、使用規模が、原則2000kw以上の顧客に対してのみでありました。
■一般家庭の電力自由化は見送り
個人宅への電力自由化を、本格的に検討するようになりましたのは、1990年代に入った頃でした。
この当時、為替相場が、急激な円高に見舞われ、対ドルで比較した場合、日本の電気料金は、相当高いものになっていました。
その現象は直ちに輸出品の商品価格に跳ね返ってきます。
輸出産業である多くの製造業者などから「電気料金を諸外国並みに下げて欲しい」との要望が相次ぎました。
この当時、一般家庭においての電気料金が特に高いとの印象はなく、製造業者のみに大きな影響を与えていたのは確かです。
この時期に、海外、特に欧米諸国での電力自由化が進み、日本の電気料金割高制に批判が集中していたという事実もあり、自由化へ動き出したのでした。
■大規模事業所を対象とした「部分自由化」がスタート
最初に電気の小売り自由化がスタートしたのは2000年でした。
その電力自由化の対象になったのは大きな工場や、ビルなどの事業所でした。
これに合わせて、新規参入する電力会社が増えだしたのもこの頃です。
電力自由化の対象をこれまでの大規模から、中規模のビルまで段階的に下げて行きました。
この時点では、一般家庭まで電力自由化を広げて行こうとの考え方も一部ありましたが、現状を鑑みて、むしろ料金を下げるよりも、地域の電力会社が電力を安定して供給する事を重視し、料金引き下げは検討されませんでした。
■電力小売り全面自由化へ
なぜ1995年実施された電力自由化から20年以上も経過して、一般家庭を対象とした電力小売り自由化がスタートすることになったのか。
電気というのは生活インフラにおける重要な要素ですから、無闇矢鱈に新規事業者に任せるというよりは、信頼のおける企業が安定して供給するということを重視する必要があります。
同時に電力会社側からすると、自社の管轄する地域に住む人は、選択の余地なく契約を結ばざるを得ないため、顧客の獲得が容易であり、経営という面でもメリットがあり、両者にとって良い形でした。
電気料金に関しても、「総括原価方式」というコストと利益が適正かどうかを、国が判断するシステムを取っていますが、市場での競争相手がいないため、充分に利益を確保する価格を設定できる体制が存在していました。
しかし、電気料金の平均的な高価格化、人々のライフスタイル変化などが要因となり、自由化に踏み切ることになったのです。
■電力自由化の必要性
電気というものがあらゆる産業の基盤となっているのは周知の通りです。
その料金が低下すれば、産業全体の国際競争力が強化され、国内産業の空洞化もある程度防げるのではないかと期待する向きもあります。
しかし安定供給よりも料金が安い方が良い、コストが高くても自然エネルギーを利用したい、電気設備のメンテナンスまで一貫してサービスを受けたい、など消費者のニーズはより多様化しており、それぞれのニーズに対しておすすめしたいプランも増えています。
確かな目を養うことが、電力小売り自由化を上手に活用することにつながることは間違いなく、しっかり情報を集めておけば新電力への乗り換えはおすすめできると言えます。